多様性を持った森作りは、子どもの生きる強さに

トンボ移住と仕事のリアルインタビュー
Twitter @ryo__sugawara

移住と仕事のリアルインタビューVol.5(後半)

「子どもに自然体験を残したい。そのために自分は何ができるのか」

――今まで伺ったお話からすると、現在のお仕事はすべて移住前に決めてあったんですか?

「そうです。5年くらいずっと考えた末に移住してきました」

――5年間移住計画を練っていたのですか!?それはすごい。詳しく教えて下さい

「自分は、サケが上ってくる川と、ブナの原生林があるような豊かな自然環境で育ちました。その中で経験したことは、自分のアイデンティティとか、郷土愛とか、そういう物につながっていると感じていて、自分の子ども達にも、そういう体験をしてもらいたいと思っています。

そうすると豊かな自然を残さなくてはならない。そのために、自分が何ができるかって考えたら、たった一つの事しか無いってことに気がつきました。それは、木を植えるって事なんですよ。」

すべての事業はクヌギにつながる

「実はすべての事業は、クヌギを植えるために行っているんです。クヌギを利用して、キノコやヤママユガ、クワガタやカブトムシを育てる。そして、クヌギをまた植え育てる。そしてそこにいろいろな昆虫がやってきて、生態系が豊かになっていく。これが循環型の里山生活ですよね。

豊かな生態系というと、人の手が入らない原生林をイメージされることもあるかもしれません。しかし、基本的に、自然は人の手で適切な管理をしなければ豊かな生態系は維持できないと考えています。キャンプ場も、この理想を体現するために整備を進めています。」

――なるほど、一つ一つの仕事はバラバラに見えて、実は木を植えるための仕事という点で、一本の道につながるんですね。

「昆虫林業。それはあらゆる環境問題に一矢報いる森作り」

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――菅原さんは昆虫を中心とした森作りをされているんですよね。

「そうです。昆虫林業という考え方を提唱しています。昆虫林業の定義は、昆虫の住処を破壊せずに行う、昆虫主体の林業です。実際に取り組みはじめて3年目の山があります。

昆虫林業と一般的な林業とでは、木の管理方法も施工方法も違います。伐採の仕方、切り方が違いますし、下草の刈り方も、自然農や土中環境の改善の技術を応用して行います。木と木の間隔を10mほど空けた状態にすると、日当たりや、風通しが良くなり、そこに生息する生き物が増えていきます。

昆虫林業は、一般的な林業に比べて生産性や効率は落ちますが、結果的には持続可能な林業につながります。あらゆる環境問題に一矢報いる有意義な取り組みだと思っています。原木キノコ栽培もこの中の一つです。

一連の流れを考えたときに、こここそが自分の目的に合致していた地域だと判断して、美郷町に移住してきました。」

「それは木を植えることにつながるか、つながらないか」

「新たな仕事の依頼がきて、受けるか受けないか迷うときは、それが木を植えることにつながるかどうかって事で判断しています。大口の注文が来て金額に心がぐらつくときもあるけど。(笑) 

木を植えることにつながらない仕事は受けません」

「いきものはみんな違う。違ってOK」そう胸を張って言えるように

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――事業の目的は木を植える事だということは理解しました。これは、先ほどのお話からすると、最終的には子どもたちのアイデンティティにもつながりますよね?

「そうです。それは自然の中での原体験ということばかりではありません。

日本の学校教育の中では、みんな同じ服を着て、みんなで同じ行動をしなくてはいけない場面が多々あります。画一的であることを、しばしば求められます。その中に収まりきれないと、非難されたり、収まりきれないことを子どもや親が悩んでしまうということになりがちです。」

――子育てをしていると、そんな場面は正直ありますね。

「ですが、自然界のたくさんの植物や昆虫を知っていくと、自ずと万物は多様性から成り立っている事実を知ることになります。多様性を知ると、自分と違う人がいたとしても、排除しようとしない、全部OKと思えるようになると思うんです。

それは、自分自身も、他人と違っててもいい、ということにもなります。子どもたちには、そんな誇りを持って生きていって欲しいです。

自然の多様性を通じて、子どもたちがそう感じられるようになるのを手助けするのが、最終的な目的かもしれません。

まあ、自分自身がずいぶん人とは違う生き方してるから。一種の世間への抵抗ですね」

と笑う菅原さん。抵抗という言葉が持つ強さとは裏腹に、子どもや生き物を思う愛情の深さを感じました。

私自身も振り返ってみると、子どもの感性で、自然の中で感じ、考えることは、はじめて自分という存在を認識するような、他では得ることができない感覚だったと思います。今を生きる子どもたちにも、自然の中で自分という存在を感じてほしい、そう一人の親として思います。

菅原さんの活動は、ただ、昆虫や植物などの生物相を豊かにするということばかりではなく、いろいろな意味で生きるとか、つながるとか、そういう本質的なことを知るための取り組みだと感じました。

昆虫の知識を農業の分野にも生かして 異分野との共同も

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菅原さんは、豊富な昆虫の知識を有機農業の分野に生かせないかと、新しい取り組みも開始しました。有機農家とタッグを組んで、昆虫の生態を生かした防除方法や栽培方法の提案をされているようです。

農薬を用いない防除が可能になれば、環境負荷を減らすことになりますし、有機農業のハードルも下がります。昆虫を主体とした事業は、農業にとどまらず、あらゆる分野での共同の可能性を感じました。ご興味のある方は

菅原昆虫店Twitter:@ryo_sugawara

HP:insectsgw.official.ec

cosmic seed(旧樫葉オートキャンプ場)Instagram:@insect_park_cosmic_seed

をご覧ください。

菅原さんおもしろいお話をありがとうございました。

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